カラマーゾフの兄弟1|ドストエフスキー、訳:亀山郁夫|光文社古典新訳文庫|2007/12/02-12/30

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)|P443|自|5
雑な人間関係と、少年時代の様子から4人が顔を合わすまでが開示される

アレクセイ(アリョーシャ)・カラマーゾフ
(P9)主人公。フョードル・カラマーゾフの三男。二番目の妻の子(P82)彼はさる知人をとおして兄ドミートリーに、自分は兄さんをとても愛しており、約束したことが守られるよう期待していると伝えただけだった(P140)ドミートリーのフィアンセのカテリーナが書いた小さな書きつけを、ホフラコーワ夫人の娘リーズから受け取った(P384)兄(イワン)が自分から先歩みよってきたのにはわけがある、いや、かならずや何かもくろみがあるにちがいないと感じた

(P11)重要なのは第二の小説であり、これは、すでに現代、つまり現に今の時代におけるわたしの主人公の行動である。しかるに第一の小説は、すでに十三年も前に起こった出来事であり、これはもう小説というより、主人公の青春のひとコマを描いたものにすぎない

フョードル・カラマーゾフ
(P16)十三年前に悲劇的な謎の死をとげた。二度結婚し、三人の子ども(ドミートリー、イワン、アレクセイ)をもうけた。あだ名は「のらくら」(P247)彼はふと自分の心の奥にほとんど生理的にひびいてくる霊的な恐怖と、道徳面での強い不安を感じてきたのである
ドミートリー(ミーチャ)・カラマーゾフ
(P17)フョードルの長男。最初の妻の子(P26)ピョートル・ミウーソフに引き取られ、モスクワで育ち陸軍将校となった(P176)だが、ミウーソフがその答えを思いつくより先に庵室の戸が開き、だいぶ遅刻したドミートリーが入ってきた(P176)中背で、感じのよい顔立ちをした二十八歳の青年だが、年齢よりはだいぶ老けてみえた。筋骨たくましい、すばらしい体力の持ち主であることが一目でわかったが、にもかかわらず、その顔にはなにか病的な色がにじんでいた(P271)網垣の向こうの隣家の庭
イワン・カラマーゾフ
(P17)フョードルの次男。二番目の妻の子(P38)自力で大学に通い、新聞編集部とのコネを絶やさなかった。教会裁判をめぐる問題を扱った記事によって広い層からにわかに特別の関心を寄せられる機会を得た(P159)「教会的社会裁判とその権限のおよぶ範囲に関する問題」について
アデライーダ・ミウーソフ
(P17)フョードルの最初の妻。かなりの資産家でこの土地の地主でもあった名門貴族ミウーソフ家の出身
グリゴーリー・クトゥーゾフ
(P23)カラマーゾフ家の忠実な下男。フョードルにほったらかしにされたドミートリーの世話を引き受ける(P245)もしもなにかの理由で(驚くほど非論理的なことがしばしばだったが)、それが彼の目にまちがいのない真実と映ったなら、その目標をめざして遮二無二突き進む頑固一徹な男だった。総じて彼は正直者で、袖の下がきかない潔癖な男だった
ピョートル・ミウーソフ
(P24)アデライーダのいとこ。リベラル派。ドミートリーを引き取る(P80)(ゾシマ長老の元に集まるという)フョードルの提案に並々ならぬ興味を示した。四、五十年代的な自由主義者で、自由思想家にして無神論者のミウーソフは、おそらくは退屈しのぎか、それとも軽薄な気晴らしのつもりか、この問題にやけに熱心に首を突っ込んできた
ソフィア・イワーノヴナ
(P30)フョードルの二番目の妻。ヴォルホフ将軍の未亡人に育てられた。アレクセイが四歳の時に死ぬ(P367)おれ(フョードル)は、おまえの死んだ母さんのことはいつもアッといわせてきたもんさ
ヴォルホフ将軍の未亡人
(P34)ソフィアの死後、イワンとアレクセイを引き取って間もなくぽっくり死んでしまい、その死後二人に千ルーブルずつ遺した
エフィム・ポレーノフ
(P35)県の貴族団長。ヴォルホフ将軍の未亡人の筆頭相続人。ヴォルホフ将軍の未亡人の死後、イワンとアレクセイを養育した

(P42)しかし彼(イワン)は、ドミートリーにとってより大事なある案件をめぐって、モスクワから帰郷する以前から手紙をかわし合っていたのである

ゾシマ長老
(P44)他に並ぶ者のない希代の人物であるとアリョーシャには思われた(P102)小柄なうえ猫背で、しかもひどく足が弱そうで、まだ六十五ながら、病気のため少なくとも十歳は老けてみえた。顔全体が非常にひからびた感じで、細かな皺におおわれ、とくに目のまわりにそれが密集していた。その目は小さく明るい色をしていて、くるくるよく回り、二つの輝く点のように煌いていた。白髪が残っているのはこめかみのあたりだけで、ごくまばらな細かいあごひげが楔形にのび、ときどき薄笑いを浮かべる唇は薄く、まるで二本の細い紐のようだった。鼻は高いというのではないが、鳥のようにつんと尖っていた(P426)たとえ一日二日延びることがあるにせよ、長老がこの世を去ろうとしていることは、アリョーシャにとって疑う余地のない事実だった

(P64)現実主義者においては、信仰心は奇跡から生まれるのではなく、奇跡が信仰心から生まれるのだ
(P66)「ぼくは不死のために行きたい。中途半端な妥協はごめんだ」
(P67)わが国の修道院における「長老」の説明
(P69)では長老とはいったい何なのか? それは人の魂と意志をとらえ、自分の魂と意志に取りこんでしまう者のことである
(P79)ドミートリーからアリョーシャは、最近になって二人の兄を並々ならぬ強い絆で結びつけた、ある重要な事件の一部始終を知ることになった
(P79)二人(ドミートリーと父フョードル)の関係は悪化し、もはや耐えがたいものとなった。そこでどうやらフョードルのほうが先手を打ち、ゾシマ長老の庵室に家族全員が集まったらどうかと、なかば冗談のつもりで提案したらしい

ピョートル・カルガーノ
(P86)ピョートル・ミウーソフの遠縁。二十歳くらいの青年で大学入試の準備中
マクシーモフ
(P89)トゥーラ県の地主。少し禿げ上がった年配の紳士(P221)見ろよ、地主のマクシーモフまで走っていく
フォン・ゾーン
(P93)マクシーモフが似ている(P230)やっぱりマクシーモフは似ている(P442)フォン・ゾーン事件について
ワルソノフィー長老
(P96)ゾシマ長老の先代
教会分裂(ラスコール)
(P100)巨大なサイズの聖母像だが、おそらくは教会分裂よりもはるか以前に描かれたものらしかった(P437)ロシア正教会独自の典礼のあり方を、あえてギリシャ正教会のそれに改めようとしたニコン大主教の施策に抵抗し、独立した宗派を作りあげた人々を、分離派(旧教徒派、古儀式派)と呼ぶ。また、在来のロシア正教とは異なる独自の信仰システムを切り開いた人々は、異端派と呼ばれ、その中には、鞭身派、去勢派、逃亡派などのセクトがあった
マーヴラ・フォミニーチナ
(P108)ピョートル・ミウーソフの叔母
ラキーチン
(P109)神学生。相手の心のうちが彼(アリョーシャ)にはわかっていたからだ(それを知っているのは修道院全体でもアリョーシャひとりだった)(P174)ラキーチンも自分(アリョーシャ)におとらず興奮していることがわかった。彼が興奮しているわけをアリョーシャは知っていた(P210)ミハイル(P219)ぼくがグルーシェニカの親戚だなんてこと、あるはずがない。あんな売春婦の
ホフラコーワ夫人
(P120)地主。三十三歳になるかならないかながら、夫に先立たれてもう五年が経っていた。十四歳になる娘リーズは、両足の麻痺を患っていた
「おキツネさん」
(P121)わけのわからない金切り声をあげ、急にしゃっくりをしだし、ひきつけを起こしたかのようにぶるぶる体を震わせはじめた
ナスターシャ
(P123)まだけっして年寄りというのではないが、ひどく痩せてやつれ、日焼けというよりむしろ顔全体がどす黒くなった女。三歳の息子アレクセイを失った。夫はニキータ
プロホロヴナ
(P131)下士官の未亡人の老婆。息子のワーシャから一年近く連絡がない
夫をなくした農婦
(P133)夫から虐待を受けていた。ゾシマ長老から聖像の首飾りを受けた
乳飲み子を抱いた農婦
(P135)ヴィシェゴーリエから来た。赤ちゃんの名はリザヴェータ。六十コペイカを寄付した
リーザ(リーズ)
(P139)どうにも堪えきれない様子でふいにげらげら笑いだした……(P428)アリョーシャにラブレターを書いた
ヨシフ神父
(P158)修道司祭。図書係
パイーシー神父
(P160)修道司祭。無口ながら学識がある(P423)ゾシマ長老の庵室に居あわせていた
セミョーン・カチャーリニコフ
(P177)町の治安判事。ドミートリーの苛立ちやすい性格を「断片的でいびつな頭」と評した
パーヴェル・スメルジャコフ
(P178)フョードルの下男。ドミートリーに間違った集合時間を伝える(P331)バラムのロバ(P332)スメルジャコフについて(P333)彼の一生につきまとう癲癇の症状が現れたのだ
カール・モール、フランツ・モール、フォン・モール伯爵
(P185)いずれもシラー『群盗』の登場人物
アグラフェーナ(グルーシェニカ)・アレクサンドロヴナ
(P208)カラマーゾフ家の男どもが入れあげる娼婦(P213)老いぼれの商人で野暮な道楽者の町長サムソーノフの元妾(P292)そのうちあの子をたいらげちゃうってな……(P397)彼女は逆に音を立てなかった。床にふれても足音はまったく聞こえなかった(P399)彼女は二十二歳だったが、顔の感じもちょうどその年恰好にふさわしかった(P409)「そう、記憶にこう留めておいてくださいね。あなたはわたしの手にキスをした、でも、わたしはしなかったと」グルーシェニカの目のなかで、なにかがふいに光った
カテリーナ(カーチャ)・イワーノヴナ
(P212)貴族の生まれで大佐の娘。ドミートリーのフィアンセ(P268)初めて会ったときから、彼(アリョーシャ)はカテリーナを恐れていた(P295)この次女っていうのが、ほかでもないカテリーナ・イワーノヴナで、中佐の二度目の奥さんの子どもなのさ(P301)とつぜん部屋のドアが開いておれの目の前、おれのアパートにだぞ、カテリーナが現れたんだ(P389)(三週間前に初めて紹介された時の印象は)たしかに兄(ドミートリー)が恐ろしいほどほれ込みはしても、たぶんそう長くは好きでいられないような何かがあった(P401)「わたしたち、はじめてお会いしたんです、アレクセイさん」酔ったような口ぶりでカテリーナは言った
イシドール神父
(P220)やつらに向かって叫んでいる
ニコライ神父
(P222)修道院
マルファ・イグナーチエワ
(P245)グリゴーリーの妻
リザヴェータ・スメルジャーシチャヤ
(P255)神がかりの女。父親は宿なしの落ちぶれた病気がちの商人イリヤ。フョードル家に忍び込みスメルジャコフを産んでから息を引き取った
コンドラーチエワ
(P263)富裕な商人の未亡人。妊娠したリザヴェータを自宅に引き取る
アレクサンドル・フォン・シュミット
(P273)退役中佐
アガーフィヤ・イワーノヴナ
(P294)カテリーナの姉。ドミートリーが昔付き合った娘
クラフチェンコ
(P299)町医者
トリーフォノフ
(P300)やもめの商人。金縁の眼鏡に髭
去勢派宗徒
(P336)(スメルジャコフは)なぜか異様なくらい老けこみ、年齢とまったく不相応なほど皺がふえ、顔も黄ばんで、去勢派宗徒みたいな感じになっていた
ルキヤーノフ
(P340)商人
デミードフ
(P363)商人。彼からゾシマ長老が六万ルーブルをだましとったと、フョードルは言う
ベリャエフスキー
(P368)美男の金持ち
ポルフィーリー
(P423)見習い修道僧。ゾシマ長老の庵室に居あわせていた