抜け道

転車だけのみちというものが自然とできることがある。 車には幅が狭すぎて、自転車や徒歩で通り抜けることができる、いわゆる抜け道。
 その自転車みちは誰かの住宅の横をすり抜ける。 その住宅の人の近くを、なぜか夜遅く庭の植木に水をあげている傍を、ゆっくりと通り抜けるとき、なんとなく一声かけねばという気持ちになる。「こんばんわ」
 植木に水を与えながら、その人は言った。「ああ、お帰りなさい」
 よく考えてみると、その人と初めて喋ったことに気がついた。