【亡霊の囁き】

 「ウソだ! こんなの“スターウォーズ”じゃない!」ルークは絶叫しながら飛び起きた。
 慌てて取り押さえたオビ=ワンは、「まあまあ、印象は人それぞれだから、細かいことは言うまいよ」とたしなめながら、ルークの腕を軽く叩いた。「おや、これはものすごい汗だ。さぞや悪い夢でも見たのだろう」
 「違うのです、マイマスター」ルークは少し震えていた。「亡霊の声が聞こえたのです。ぼくはてっきり、ヨーダがそう言っているんだと思っていました」
 「その、ヨーダはなんと言ってたんだね?」
 「『考えるな、受け入れよ』と。ああでも、それはヨーダじゃないんです! とにかく、ぼくは考えることができないんです。考えようとすれば、亡霊の声がいつも聞こえてくるんです」
 「ルーク、もっとうまくわたしに説明してくれぬか」
 「これはSFじゃなくてファンタジーだから、説明などいらないのです。ただ、消去された事実を指示するだけでよいのです。Oh! マイマスター」ルークはオビ=ワンの胸に顔をうずめた。
 オビ=ワンはルークの頭をやさしく抱きかえした。「『亡霊の声の脅威』か。なるほどこれこそまさに『ファントム・メナス』に違いない。こりゃうまい、はっはっは」かつて自分もクワイ=ガン・ジンからこんな風にやさしく抱かれたことを思い出そうとし、でも実はそんなこと一度もなかったことに気がつき、オビ=ワンは自分の笑い声が虚ろに響くのを感じていた。
(了)