すべては「裸になる」から始まって|森下くるみ|講談社文庫|2011/02/05-02/07

すべては「裸になる」から始まって (講談社文庫)|P227|自|5
感想:父と再開し新しい関係ができそうなあたりで、感動した

森下くるみ(もりした・くるみ)
(表紙見返し)1979年秋田生まれのAB型。1998年にインディーズレーベル「ソフト・オン・デマンド」からAV女優としてデビュー。多くのファンを獲得し、約10年の間に50本強の作品に出演。その後「Dogma」に移籍。男性誌グラビアやコラムの連載、トークイベントの出演、クラブのDJなど、活動は多岐にわたる。「小説現代」2008年02月号に短編小説「硫化水銀」を発表した
はじめに
(P10)
第一章 AV女優誕生
(P13)
卑しいオッサンにスカウトされて
(P14)

(P17)あたしは「ここは臭くて速度が異常に早いな」という印象を東京の街に持った

TOHJIRO監督
(P24)師弟関係、または親子関係、更に戦場においての同志とも言え、同時にどれにも属さないという関係を長い間続けている
富良野での初撮影
(P28)

(P35)「ん゙ーん゙ー」小学生の反応かっ、と突っ込みを入れられるくらいならまだいいとして、今こんなAV女優がいたら撲殺されてしまうだろう、と思う
(P37)「恥ずかしい?」とまた聞かれて、ぶっきらぼうに突き返した。「あっついです」ライトは、確かに熱かった。でも、「恥ずかしい?」と聞かれて、「恥ずかしい」と答えることが、恥ずかしいのだ

客が来ないサイン会
(P43)
『うぶ』
(P43)北海道富良野で撮影されたデビュー作
「レンタル」と「セル」
(P44)
専属女優
(P45)
父に殴られた日々
(P49)

(P53)父親の皮を被ったあいつは、脅威の権化で、鬼で、悪魔。17歳の夏まで、父はそんな象徴としてあたしらの前に立ちはだかっていた
(P60)「役所から離婚届持って来て」母親にそう指示したのは、あたしら姉弟である
(P65)これを凌ぐ経験はない。しかし、解放されたかに思えたのだが、単純ではなかった。甘くもなかった。あたしの心に人間不信の根は深く張られた

『AV女優』
(P65)ドキュメンタリータッチ

(P71)「目標と言うか……、なりたいなと思うのは、うちの母さんかな」何気なく言ってしまったが、嘘ではない。「なかなかなれないよ。お前の母さんみたいな人には」あたしは監督のその言葉の真意までは汲み取れず、カメラから目線を外し、再び海を見た

第二章 色々な人と出会って
(P73)
お金と友だち
(P74)
彼氏とのセックス
(P99)

(P109)民家の塀の陰にうずくまる。塀から30m離れたところに彼がいつも車を停めているところがあって、陰から見えるようになっているのだ。帰る時間はだいたい分かっていたので、うずくまって20分もしないうちにロックの音楽の漏れる四駆の車がやってくる。あたしは一瞬息を殺す。いつもと変わらぬ様子で家に入っていく彼を見届けると、辺りが静まり帰るのを待ち、ヨッコラショと立ち上がる。「元気なのを確認できたからいーや」
(P128)信じるには、まず先に覚悟することだ。そして諦めないこと。その強い意志。やっと自分をも信じられるようになって、人と共有することの楽しさも知って、あたしはまた救われたのだと感じた。(中略)愛情を知ること、愛情を与えること。そして愛情を豊かにしてゆくということ。それに気づいたのだった

ファンは時として静かに壊れゆく
(P129)
食ザー
(P131)食材に精液をかけ、それをAV女優が食べる

(P138)「性病になるなんて自業自得じゃないか。ろくに自分の管理もできずにいるから、同じ過ちを何度も繰り返して結局は病院にすがる。何のために生きてる? むしろ風俗という仕事と、金目当てでそこに従事する女性に嫌悪感すら覚える。ああ汚らしい。彼女らは人生を捨てている。どうして真っ当な仕事につかないんだろう。僕は医者として人を救える」あたしはこのテの偏見が嫌いだ。口汚く罵るので、ついつい構ってあげてしまった。「医者という職業がいかに立派なのかはわかりました。でもあたしはそれを羨ましいとは思わないし、なりたいとも思わない。自分の価値観から逸れてるものはみんな間違い。そんな考え方があるんなら、医者になろうが何になろうが、人なんて救えやしないでしょう」

第三章 過酷な撮影現場
(P143)
クイーンと呼ばれたころ
(P144)

(P147)スタッフを含めたごくごく親しい人たちは、あたしをチヤホヤすることはなかった。いつでも、どんなときでもデビューした頃のまま接してくれた。「くるみも大人になったなぁ」なんて親戚のおじさんのように感慨深げに言いながら
(P149)気が遠くなるくらいのアダルトビデオが、AV女優が、この世に存在するのを、あまり人は知りたがらない。あたしはそんな一つの「世界」を、若干ふかん気味の位置から見るのが好きな、ヒネた女優だったのだ

死ななきゃ何でもやる
(P153)

(P154)コスプレ、ロリ、痴女、熟女、素人、ギャル、巨乳、外国人、SM、スカトロ、盗撮、露出、レズ、ナンパ、ぶっかけ、隠語、緊縛、アナル、ハメ撮り。もっとある。まだまだ細分化中

「ぶっかけ」、「ごっくん」
(P156)『特濃くるみるく』や『ザーメン・バトル・ロワイヤル』、『スペレズ2003』などに見られる「ぶっかけ」、「ごっくん」とは大量飲液のこと

(P157)出てくるのは、白ヘビや白トカゲを彷彿とさせるような、ほれぼれするくらいに真っ白な便

汁男優
(P158)ぶっかけ隊。AV女優に精液を浴びせる、一種の職人
神仏と、それに祈りを捧げる人々
(P160)他のAV女優のぶっかけモノ撮影現場での様子を、タイの寺院での情景に当てはめた
『東京M女ストーリー』
(P162)本格的なSMに挑戦

(P163)「身動きの取れないあたしの周りを、男の人が取り巻いて、ヤリでわき腹をつつくのではないか?」下らない妄想がどんどん溢れ出す。縄で体の自由を奪われ、精神の一切の逃げ場も取り上げられると、自分の内側に意識が向かう
(P164)縄を解かれたら、肩こりが治っていた。頭の方は朝すっきり目覚めた時以上の爽快感で冴え渡り、普通のセックスとは違った快感があった

ドラマ物
(P166)『暴行』『瑠璃色の森』『ハメットさん』『ルームメイト』『東京M女ストーリー』『Killer Kurumi』

(P168)カラミの最中に監督の指示を聞く冷静さを保ちつつも、体中の汁という汁を垂らし、カメラの向こうの人々に情熱を叩きつけるのがあたしらの使命。それでこそAV女優だと思う

やはり一番傷つくのは精神的なことで
(P170)
『ファン感謝デー』
(P171)2週間溜めたザーメンで腹痛
『ファン感謝デー2』
(P173)肛門にウン汁
第四章 一生懸命に生きる
(P181)
コラムから
(P182)
あったかいなぁ人肌は
(P185)
加藤鷹
(P188)
ささやかなる夢
(P196)

(P209)「気をつけて帰れよ。じゃあまたなー、ありがとうなぁ」

あとがき
(P213)
「そろそろ裸にならなくてもいいよ。」花村萬月
(P216)