もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら|著:岩崎夏海、イラスト:ゆきうさぎ、カバー背景:益城貴昌(Bamboo)、デザイン:萩原弦一郎(デジカル)|ダイヤモンド社|2010/07/18-09/09

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら|P272|自|4
もしドラッカーが高校女子野球部マネジャーだったら

プロローグ
(P5)
川島みなみ
(P5)東京都立程久保高校野球部マネージャー。二年の夏休み前からマネージャーに就任した(P110)ミーティングプラン(P164)野球が嫌いになったきっかけ
第一章 みなみは『マネジメント』と出会った
(P7)
加地誠
(P9)程久保高校野球部監督(P97)あれこれと理由をつけて、結局慶一郎との対話を拒絶した(P106)『ピッチャーの気持ち』
星出純
(P10)程久保高校野球部キャプテン(P193)キャプテンを降りる
柏木次郎
(P10)程久保高校野球部キャッチャー。みなみの幼なじみ(P107)「浅野! もっとリラックスして、打たせていこうぜ! もっとバックを信頼して!」
北条文乃(あやの)
(P11)程久保高校野球部一年生女子マネージャー(P76)アンドロイド(P128)練習メニューの作成

(P17)人を管理する能力、議長役や面接の能力を学ぶことはできる。管理体制、昇進制度、報奨制度を通じて人材開発に有効な方策を講ずることもできる。だがそれだけでは十分ではない。根本的な資質が必要である。真摯さである。(一三〇頁)

宮田夕紀(ゆうき)
(P20)みなみの幼なじみで同級生。入院中。程久保高校野球部マネージャー(P68)マーケティング=「お見舞い面談」(P230)お別れ
宮田靖代
(P20)夕紀の母

(P25)自らの事業は何かを知ることほど、簡単でわかりきったことはないと思われるかもしれない。鋼鉄会社は鉄をつくり、鉄道会社は貨物と乗客を運び、保険会社は火災の危険を引き受け、銀行は金を貸す。しかし実際には、「われわれの事業は何か」との問いは、ほとんどの場合、答えることが難しい問題である。わかりきった答えが正しいことはほとんどない。(二三頁)

第二章 みなみは野球部のマネジメントに取り組んだ
(P35)

(P35)企業の目的と使命を定義するとき、出発点は一つしかない。顧客である。顧客によって事業は定義される。事業は、社名や定款や設立趣意書によってではなく、顧客が財やサービスを購入することにより満足させようとする欲求によって定義される。顧客を満足させることこそ、企業の使命であり目的である。したがって、「われわれの事業は何か」との問いは、企業を外部すなわち顧客と市場の観点から見て、初めて答えることが出来る。(二三頁)
(P36)したがって「顧客は誰か」との問いこそ、個々の企業の使命を定義するうえで、もっとも重要な問いである。(二三〜二四頁)
(P37)やさしい問いではない。まして答えのわかりきった問いではない。しかるに、この問いに対する答えによって、企業が自らをどう定義するかがほぼ決まってくる。(二四頁)

浅野慶一郎
(P38)程久保高校野球部二年ピッチャー
二階正義(まさよ)
(P44)程久保高校野球部二年補欠。ドラッカーの大ファン(P168)マネジメントチームに加わった(P194)新キャプテン

(P58)企業の目的は、顧客の創造である。したがって、企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングイノベーションである。マーケティングイノベーションだけが成果をもたらす。(一六頁)
(P59)これまでマーケティングは、販売に関係する全職能の遂行を意味するにすぎなかった。それではまだ販売である。われわれの製品からスタートしている。われわれの市場を探している。これに対し真のマーケティングは顧客からスタートする。すなわち現実、欲求、価値からスタートする。「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」を問う。「われわれの製品やサービスにできることはこれである」ではなく、「顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである」と言う。(一七頁)

第三章 みなみはマーケティングに取り組んだ
(P69)
朽木(くつき)文明(ふみあき)
(P82)程久保高校野球部外野手(P214)レギュラーから外しピンチランナー
桜井祐之助
(P84)程久保高校野球部一年生ショート(P84)夏の大会でエラー(P102)エラー

(P89)マネジメントは、生産的な仕事を通じて、働く人たちに成果をあげさせなければならない。(五七頁)
(P89)焦点は、仕事に合わせなければならない。仕事が可能でなければならない。仕事がすべてではないが、仕事がまず第一である。(七三頁)
(P90)働きがいを与えるには、仕事そのものに責任を持たせなければならない。そのためには、1.生産的な仕事、2.フィードバック情報、3.継続学習が不可欠である。(七四頁)
(P92)専門家にはマネジャーが必要である。自らの知識と能力を全体の成果に結びつけることこそ、専門家にとって最大の問題である。専門家にとってはコミュニケーションが問題である。自らのアウトプットが他の者のインプットにならないかぎり、成果はあがらない。専門家のアウトプットとは、知識であり情報である。彼らは専門家のアウトプットを使うべき者が、彼らの言おうとしていること、行おうとしていることを理解しなければならない。専門家は専門用語を使いがちである。専門用語なしでは話せない。ところが、彼らは理解してもらってこそ初めて有効な存在となる。彼らは自らの顧客たる組織内の同僚が必要とするものを供給しなければならない。このことを専門家に認識させることがマネジャーの仕事である。組織の目標を専門家の用語に翻訳してやり、逆に専門家のアウトプットをその顧客の言葉に翻訳してやることもマネジャーの仕事である。(一二五頁)
(P94)言い換えると、専門家が自らのアウトプットを他の人間の仕事と統合するうえで頼りにすべき者がマネジャーである。専門家が効果的であるためには、マネジャーの助けを必要とする。マネジャーは専門家のボスではない。道具、ガイド、マーケティング・エージェントである。逆に専門家は、マネジャーの上司となりうるし、上司とならなければならない。教師であり教育者でなければならない。(一二五頁)

第四章 みなみは専門家の通訳になろうとした
(P99)
新見大輔
(P100)程久保高校野球部一年生投手

(P119)成長には準備が必要である。いつ機会が訪れるかは予測できない。準備しておかなければならない。準備ができていなければ、機会は去り、他所へ行く。(二六二頁)
(P120)人のマネジメントとは、人の強みを発揮させることである。人は弱い。悲しいほどに弱い。問題を起こす。手続きや雑事を必要とする。人とは、費用であり、脅威である。しかし人は、これらのことのゆえに雇われるのではない。人が雇われるのは、強みのゆえであり能力のゆえである。組織の目的は、人の強みを生産に結びつけ、人の弱みを中和することにある。(八〇頁)

第五章 みなみは人の強みを生かそうとした
(P127)

(P134)仕事を生産的なものにするには、四つのものが必要である。すなわち、1.分析である。仕事に必要な作業と手順と道具を知らなければならない。2.総合である。作業を集めプロセスとして編成しなければならない。3.管理である。仕事のプロセスのなかに、方向づけ、質と量、基準と例外についての管理手段を組み込まなければならない。4.道具である。(六二頁)
(P135)自己目標管理の最大の利点は、自らの仕事ぶりをマネジメントできるようになることにある。自己管理は強い動機づけをもたらす。適当にこなすのではなく、最善を尽くす願望を起こさせる。したがって自己目標管理は、たとえマネジメント全体の方向づけを図り活動の統一性を実現するうえでは必要ないとしても、自己管理を可能とするうえで必要とされる。(一四〇頁)
(P138)自らや作業者集団の職務の設計に責任を持たせることが成功するのは、彼らが唯一の専門家である分野において、彼らの知識と経験が生かされるからである。(七五頁)
(P143)イノベーションとは、科学や技術そのものではなく価値である。組織のなかではなく、組織の外にもたらす変化である。イノベーションの尺度は、外の世界への影響である。(二六六〜二六七頁)
(P144)これに対しイノベーションの戦略は、既存のものはすべて陳腐化すると仮定する。したがって既存事業についての戦略の指針が、よりよくより多くのものであるとすれば、イノベーションについての戦略の指針は、より新しくより違ったものでなければならない。イノベーションの戦略の一歩は、古いもの、死につつあるもの、陳腐化したものを計画的かつ体系的に捨てることである。イノベーションを行う組織は、昨日を守るために時間と資源を使わない。昨日を捨ててこそ、資源、特に人材という貴重な資源を新しいもののために解放できる。(二六九頁)
(P150)マネジメントには、自らの組織をして社会に貢献させるうえで三つの役割がある。それら三つの役割は、異質ではあるが同じように重要である。1.自らの組織に特有の使命を果たす。マネジメントは、組織に特有の使命、すなわちそれぞれの目的を果たすために存在する。2.仕事を通じて働く人たちを生かす。現代社会においては、組織こそ、一人ひとりの人間にとって、生計の資(かて)、社会的な地位、コミュニティとの絆を手にし、自己実現を図る手段である。当然、働く人を生かすことが重要な意味を持つ。3.自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題について貢献する。マネジメントには、自らの組織が社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題の解決に貢献する役割がある。(九頁)

小島沙也香
(P153)程久保高校陸上部女子キャプテン(P173)沙也香自身の走力も向上した
第六章 みなみはイノベーションに取り組んだ
(P157)

(P171)そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生産的なものにすることである。これが組織の目的である。したがって、マネジメントの権限の基盤となる正統性である。組織とは、個としての人間一人ひとりに対して、また社会を構成する一人ひとりの人間に対して、何らかの貢献を行わせ、自己実現させるための手段である。(二七五〜二七六頁)
(P175)あらゆる組織が、事なかれ主義の誘惑にさらされる。だが組織の健全さとは、高度の基準の要求である。自己目標管理が必要とされるのも、高度の基準が必要だからである。成果とは何かを理解しなければならない。成果とは百発百中のことではない。百発百中は曲芸である。成果とは長期のものである。すなわち、まちがいや失敗をしない者を信用してはならないということである。それは、見せかけか、無難なこと、下らないことにしか手をつけない者である。成果とは打率である。弱みがないことを評価してはならない。そのようなことでは、意欲を失わせ、士気を損なう。人は、優れているほど多くのまちがいをおかす。優れているほど新しいことを試みる。(一四五〜一四六頁)
(P178)組織には、それ以下では存続できないという最小規模の限界が産業別、市場別にある。逆に、それを超えると、いかにマネジメントしようとも繁栄を続けられなくなるという最大規模の限度がある。(二三六頁)
(P179)実は、規模についての最大の問題は組織の内部にあるのではない。マネジメントの限界にあるのでもない。最大の問題は、地域社会に比較して大きすぎることにある。地域社会との関係において行動の自由が制約されるために、事業上あるいはマネジメント上必要な意思決定が行えなくなったときには、規模が大きすぎると見るべきである。地域社会に対する懸念から、自らとその事業に害を与えることが明白なことを行わなければならなくなったときには、規模が大きすぎると見るべきである。(二四三〜二四四頁)
(P181)規模の不適切さは、トップマネジメントの直面する問題のうちもっとも困難である。自然に解決される問題ではない。勇気、真摯さ、熟慮、行動を必要とする。(二四四頁)
(P181)真摯さを絶対視して、初めてまともな組織といえる。それはまず、人事に関わる決定において象徴的に表れる。真摯さは、とってつけるわけにはいかない。すでに身につけていなければならない。ごまかしがきかない。ともに働く者、特に部下に対しては、真摯であるかどうかは二、三週間でわかる。無知や無能、態度の悪さや頼りなさには、寛大たりうる。だが。真摯さの欠如は許さない。決して許さない。彼らはそのような者をマネジャーに選ぶことを許さない。(一四七頁)

第七章 みなみは人事の問題に取り組んだ
(P197)

(P204)組織構造は、組織のなかの人間や組織単位の関心を、努力ではなく成果に向けさせなければならない。成果こそ、すべての活動の目的である。専門家や能吏としてでなくマネジャーとして行動する者の数、管理の技能や専門的な能力によってでなく成果や業績によって評価される者の数を可能なかぎり増やさなければならない。成果よりも努力が重要であり、職人的な技能それ自体が目的であるかのごとき錯覚を生んではならない。仕事のためではなく成果のために働き、贅肉ではなく力をつけ、過去ではなく未来のために働く能力と意欲を生み出さなければならない。(二〇〇頁)

田村春道
(P214)程久保高校野球部一年生レフト
第八章 みなみは真摯さとは何かを考えた
(P227)
エピローグ
(P265)
あとがき
(P268)