怪談実話系3 書き下ろし怪談文芸競作集|著:京極夏彦、岩井志麻子、林譲治、松村進吉、安曇潤平、水沫流人、宇佐美まこと、伊藤三巳華、立原透耶、加門七海、編:『幽』編集部|メディアファクトリー: MF文庫|2010/07/19-07/29

怪談実話系3 書き下ろし怪談文芸競作集(MF文庫ダヴィンチ) (MF文庫ダ・ヴィンチ)|P233|自|4
井志麻子の話が、とてもゆっくりクる

「五年目の御祝儀──序にかえて」東雅夫
(P4)
「伊藤三巳華の憑かれない話 〜憑々草出張篇〜」伊藤三巳華
(P11)
伊藤三巳華(いとうみみか)
(P12)1977年、東京都生まれ。漫画家。2000年、漫画家デビュー。2004年からは、“視える”霊感体質を活かして、実話体験談を中心とした怪談・ホラー漫画を主に執筆している。『幽』では第二号より「伊藤三巳華の憑々草」を連載中。そのほか、『ほんとにあった怖い話』『恋愛パラダイス』などに、作品を発表している。著書に、『濡れそぼつ黒髪』(朝日新聞社ほんとにあった怖い話コミックス)がある
「するり、ずるり」立原透耶
(P31)
立原透耶(たちはらとうや)
(P32)大阪府生まれ、奈良県育ち。1991年『夢売りのたまご』でコバルト読者大賞を受賞し、デビュー。ライトノベルを中心に活躍する一方で、ホラー小説や漫画の原作も手がける。現在、某大学にて、中国語などの教鞭を執る。主な著書に、『ささやき』『小説 封神演義』『闇の皇子』『彷徨い人の詩 聞け、魂の祈りを』『竜と宙』など多数。『ひとり百物語 怪談実話集』を幽ブックスから刊行
「でもそこにいる」宇佐美まこと
(P49)
宇佐美まこと(うさみまこと)
(P50)1957年、愛媛県生まれ。現在も、四国松山在住。2007年、「るんびにの子供」で第1回『幽』怪談文学賞短編部門大賞を受賞し、デビュー。同年、同作を含む五篇が収録された短篇集『るんびにの子供』を刊行。日常のなかに潜む怪異を描き、そこから人の心の闇を浮き彫りにする手腕が高い評価を得る。そのほかの著書に、『虹色の童話』『入らずの森』(ともに長篇作品)がある

(P67)「ふーん、何やろうね」「あ、多分猫や。ケンカして怪我した猫がここを通ったんや」男どもと暮らす利点は心強いということではなく、このような徹底した楽天さと鈍感さで、とんがった神経に肩透かしをくらわしてくれるという点だ

「誘蛾灯」加門七海
(P69)
加門七海(かもんななみ)
(P70)東京都生まれ。学芸員を経て、1992年『人丸調伏令』で作家デビュー。ホラーや伝奇小説、フィールドワーク作品を中心に活躍。著書に、長篇『祝山』『203号室』、連作集『常世桜』、短篇集『鳥辺野にて』『オワスレモノ』『蠱』、怪談実話集『怪のはなし』『怪談徒然草』、オカルト・ノンフィクションに『大江戸魔方陣』『うわさの人物』『心霊づきあい』『お祓い日和』ほか多数。編著に『てのひら怪談』『響鬼探究』など
嘘談(きょだん)」松村進吉
(P93)
松村進吉(まつむらしんきち)
(P94)1975年、徳島県生まれ。2006年、怪談実話の編著者発掘コンテスト「超-1」において一位の座を獲得。2007年、『「超」怖い話 怪記』で単著デビュー。2009年夏より〈「超」怖い話〉シリーズ夏版の編著者に就任し『「超」怖い話Ξ(クシー)』(共著)を刊行、怪談実話の担い手として活躍する。共著者に、『「超」怖い話Ι(イオタ)』『「超」怖い話Μ(ミュー)』『怪集 ─蟲─』『恐怖箱 十三』『恐怖箱 しおづけ手帖』など

(P98)本来ならナビが「壊れた」と表現すべきところなのだろう。だが描画されるカーブの形と、今実際に私の車がなぞっている道路の曲線とは、完璧に一致している。現在位置の追跡も全くズレない。試しに車を減速すると、地図の描画進行も遅くなる。GPSは完璧に機能している。機能しておりながら異常な案内を続けるので、私はこれを「狂った」のだと感じている

「先輩の話」京極夏彦
(P123)
京極夏彦(きょうごくなつひこ)
(P124)1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家、全日本妖怪推進委員会肝煎。1994年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。1996年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、1997年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、2004年『後巷説百物語』で直木賞を受賞。小説での著者に『幽談』『南極(人)』『厭な小説』『数えずの井戸』など多数、小説以外に『怪談之怪之怪談』『怪談の学校』『妖怪の理 妖怪の檻』など

(P130)ちゃんと電気は通じてたけど、あの頃の電球って、何だかこう、もわっとしてたよね。隅の方までは届かないんだよねえ、光が。弱弱しいんじゃなく、奥床しいってか
(P143)ほんとうのことなんて、みんな過ぎてしまえば消えてなくなりますよ。今は、次次に、みるみる死んで行くんですよ。だから、お話は、ほんとうのことの幽霊です

「可視・不可視」林譲治
(P145)
林譲治(はやしじょうじ)
(P146)1962年、北海道生まれ。臨床検査技師を経て、1995年、『大日本帝国欧州電撃作戦』(共著)で作家デビュー。「焦熱の波濤」シリーズ、「興国の楯─通商護衛機動艦隊」シリーズなどの架空戦記小説、『侵略者の平和』『ルナ・シューター』などのSF作品を中心に活躍する。他に、『ウロボロスの波動』『進化の設計者』『最強戦艦隊』『ファントマは哭く』など著者多数。「機動戦士ガンダム」のノベライズ・シリーズも執筆
御利益(ごりやく)」水沫流人
(P167)
水沫流人(みなわりゅうと)
(P168)1957年、広島県生まれ。小学生のころにブラジルへ移り住む。帰国後の大学時代に泉鏡花の著作に出会い、以来その魅力に憑かれる。2007年、「七面坂心中」で第1回『幽』怪談文学賞長篇部門優秀賞を受賞。同年、同作単行本を刊行。独特の擬音語を駆使した文体に定評がある。ほかに、自身のブラジル生活をもとにした作品集『マリオのUFO』、共著『怪談列島ニッポン 書き下ろし諸国奇談競作集』。現在、東京都在住
「霧幻魍魎」安曇潤平
(P193)
安曇潤平(あずみじゅんぺい)
(P194)1958年、東京都生まれ。ウェブサイト「北アルプスの風」を主宰。山登りと酒と煙草を愛する。1999年、くも膜下出血を発症するも奇跡的に回復する。その後、サイト内にて怪談作品を発表。2004年、『幽』第二号から連載の「山の霊異記」でデビューする。2008年、怪談集『山の霊異記 赤いヤッケの男』を刊行。さまざまメディアで山の怪談の第一人者として取り上げられるなど活動の場を広げている
「実はこれ、すべて一人の女の話です。」岩井志麻子
(P209)
岩井志麻子(いわいしまこ)
(P210)1964年、岡山県生まれ。1982年、第三回小説ジュニア短編小説新人賞に佳作入選。少女小説家を経て、1999年「ぼっけえ、きょうてえ」で日本ホラー小説大賞、2000年に同タイトルの作品集で山本周五郎賞、2002年『trai cay (チャイ・コイ)』で婦人公論文芸賞、『自由戀愛』で島清恋愛文学賞を受賞。著書に『魔羅節』『出口のない楽園』『べっぴんぢごく』『鐵道心中』『五月の独房にて』『雨月物語』『堕ちてゆく』ほか多数