「超」怖い話ベストセレクション2 腐肉|平山夢明|竹書房文庫|2010/06/24-08/29
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再読だからインパクトは少ない、という本じゃなかった
- まえがき ── というわけで、またまたベストでございます。
- (P3)『エクソシスト』リバイバル上映チェック確認中の映写室
- 雨だれの部屋
- (P17)突然、がさりと音がすると黒い壁のようなものが姿を現した。奇妙なものだった。すべすべと滑らかな曲線を描いた筋肉の壁、真ん中には枕のようなものが載っている。唖然としている彼へと更にそれが寄ってきた。「馬だった。しかも首がないんだ」肩の少し上で首を切断された馬はゆっくりと彼に近づく、噴血が音を立てて地面に落下していた。馬具が筋肉の漲った肌の上で揺れた
- 林檎
- (P20)深夜、携帯が鳴った。〈イノチゴイ……イノチゴイ……イノチゴイ……〉妙な調子で女の声がくり返す。と、同時に物凄まじい断末魔が響き渡った
- 移動
- (P22)泥だらけで高山植物
- かりんと猫
- (P23)ちさとさんは新宿ゴールデン街で『幻影城』というミステリー好きが夜な夜な集うお店を開いている
- ネックレス
- (P32)山で拾った破裂したお数珠の欠片
- 厭な店
- (P40)コンビニの新規開店業務
- 板女
- (P49)中古のこたつ
- グランドスラム
- (P57)心霊写真専門カメラマンとトンネル
- 予約席
- (P72)ルーマニアの『死んだ男』
- ブランド
- (P82)ごつ……ごつ……。ひと月もするとその音を耳にするだけで、反射的に目が覚めるようになっていた。「凄く睡眠が浅くなった気がするんですね。だから朝になっても疲れが抜けなくて」砂時計のように少しずつ少しずつ体力が取られていく……そんな気分がしてたまにやるせなくなった
- マッサージ
- (P90)そのとき、倉島さんは被せてあるタオルの下に〈赤いやもり〉を見た。「本当に小さいものでした。五センチあるかないか」半透明のそれは、タレントの皮膚の上をスクリーンに映し出されたようにチョロチョロと動いた。と思った瞬間、倉島さんの指の中に入り込んでしまった
- キャンプ 二題
- (P95)吊り橋を渡り始めて顔を上げると向こう側に女がいた。ゾッとした。女は何も明かりを持っておらず、橋の真ん中で立ちすくんでいた。白い服、腰まであるような長い髪。両手はだらんと伸びていた。動けなくなった。ガッと川の中で石の動く大きな音がした。振り返ると女は消えていた。彼女は吐きそうになりながら、吊り橋を渡り切った。振り返ると管理棟の明かりの下に、あの女がいた
- 夜風呂
- (P104)ひなびた湯治場
- 後悔
- (P110)中学校の親友と水子
- 約束
- (P120)その人は蓋の陰から姿を現した。〈ハナテバ、ノゾミヲカナエル〉声はすべて、頭のなかに直接響いてきた
- マングローブの
畔 で - (P122)石垣島のマングローブジャングルの女性の水死体
- 踏切がなくなって
- (P135)「やだぁ、テレビなんて点けてないよ」『え? 殺してやる殺してやるって言ってるからテレビかと思ったよ』ゾッとして辺りを見回すと、箪笥の裏に煙のような影が立ち上がっていた
- 箸
- (P140)呪う相手に人骨で造った箸で食事をさせると、一年足らずで殺せるという。「箸の裏にこう筋が一本付いていて、そこに呪文が刻まれているのが証拠らしいんだな」
- 植物園
- (P141)植物状態にある患者だけを集めた病室
- 臭くて柔らかいもの
- (P148)海の家で水死体
- 生熊
- (P159)人ではなかった。「胸から下は毛がびっしり生えていて、上はつるつる」強いていいえば溶けた老人の顔を付けた熊であり、その皮を肩まで脱いだようであった。二人とも絶句した。相手も対峙したまま動かなかった。自分の太腿ほどもある腕には枯れ葉が
凝 ったように貼り付いている。赤子の頭ほどの瘤 の付いた棍棒が握られていた - とばっちり
- (P163)自分の部屋で以前に住んでいた見知らぬ人が首吊り
- 心のこり
- (P170)
卒塔婆 を折る習慣 傀儡 - (P177)人形に眉を描く習慣
- 刀
- (P183)人皮で刀を磨く
- 廃苑
- (P190)動こうとしない彼に
焦 れ、反対側に回り込もうとした途端、彼が音を立てた。「げぇげぇげぇげぜぇ」それは笑っているようで、喉全体を痙攣 させた奇妙な声だった。人間がそんな音を立てるのを彼女は聞いたことがなかった - とっくり
- (P192)廃墟のホテルに乳母車
邂逅 - (P196)ホームと電車の隙間
- T.S
- (P200)飛行機のタブー・シート
- 豚
- (P204)焼却炉で自殺
- 指の日
- (P209)右手の人差し指と指輪
- 霧
- (P213)樹海
- 糸穴
- (P223)と、突然、すーっと
臑 が撫でられた。見ると黒山から細い小さな腕が数本、ゆるゆると伸び、臑の近くで揺れていた。〈ふぅふぅふぅ〉壁の中から声が聞こえた - 電柱
- (P229)ゆるゆる……ゆるゆる。耳が見え、やがて硬い血袋のように充血した顔が覗いた。……入られたら狂ってしまう。彼女は必死の思いで手を伸ばすと窓をバンと閉めた。〈まぁだ、みごろじがぁ〉耳元で声がした
- 洗髪台
- (P230)美容室のアイドル
飴鬼灯 - (P235)焚き火
- 故障
- (P242)マンションのエレベーターと階段
- 天の川
- (P250)良くしてくれた看護婦にプラネタリウムの一件を話すと目を丸くした。「でも、見たんです」「そう……だとすると、それはきっとあなたは命を見たのよ。綺麗だった? あなたの中にもあるものだから、大切にしなさいね」年配の看護婦は、そう言って頭を撫でてくれた
- ひきぬきにくいくび
- (P251)マネキンの首を引き抜く仕事
- 着歴
- (P264)自分の声だった。〈死ぬよ……すぐ……〉ぞくりとした。振り返ると、角の姿見の中から携帯を手に四つん這いになった自分が睨みつけていた
- 土いじり
- (P266)殺人現場の土
- 洗濯機
- (P270)貰った洗濯機
廃社 - (P274)隣家の社
- 泥竹
- (P282)光る竹筒
- ひんまがり
- (P289)マンションのエレベーターの“抜き”
鼠 撒き- (P299)甚佐はデキモノを引き抜いて、しゃぶりしゃぶりと林檎のような音をたてて喰っていた
- どんでん
- (P301)刑場跡地の小塚を潰して建てた家に泊まる
- シャボン玉
- (P312)曇りの日
- 訪問
- (P317)ドアを開けると何もなかった。チチチチチチチチチチ。真横で音がした。壁際に等身大のぐちゃぐちゃしたものが貼り付いていた
- 禁忌
- (P320)死人の出た家は一ヶ月、生き物を傷つけてはならない
- 踏切
- (P330)新しい事故
- ネット予約
- (P338)口の中がさっきよりも酷い味がした。ふと見ると、天井││自分の真上に影が
凝 っている - 歯噛み
- (P342)天井の楕円形の汚れ
- こつこつ、ずるずる
- (P346)和紙の人形で封印された
- 性根
- (P352)仁王様が棒を伸ばす
- サブちゃん
- (P359)隣室に住む独居老人
- 地下で声
- (P361)レジ袋の女の爪
- 雑草鬼
- (P378)カーテンの隙間からそっと覗くと。「庭に裸の男がいたんだ」全身緑色の大男で、雑草の生い茂る庭のあちこちでドーンドーンと倒れ込んでいた
- ぷりきゅら
- (P380)遺影とプリクラ
- あおる
- (P387)美人に嫉妬する幽霊が出るというトンネル
- 布団
- (P395)元処刑場に食い込んだ開かず部屋
- トンネル
- (P406)事故多い踏切の近くのトンネル
- 解説:福澤徹三
- (P413)「超怖」は薪割りで脳天を直撃したような怖さがあった。体験者の語りをまじえた臨場感あふれる文体、従来の怪談にはなかった独自の擬音、行間から屍臭が漂ってくるほどリアルな描写