「真理」
PS2で真三国無双をしていた直クンが、とつぜん言った。
「人間って、生まれた時からすでに真理を内蔵してるんです。だから、自分の外側の真理に出合っても、それがすぐに真理だとわかるし、きれいで美しいものを見れば、ああ美しいと思うんです。じゃない?」
僕はその考え方が気に入った。「そうですね、心が美しくなければ、きっと、なにがどう美しいのかわからないですね」
「でしょ? すると、これから必要なのは、自分の中を掘り進めていって、みずから自分の真理にたどり着くことじゃないかな」
「それって、ミケランジェロの彫刻みたいですね」と僕はいった。
「ミケランジェロの彫刻?」と、ゲームの手を止めて、直クンは僕に向く。
「ええと、ミケランジェロはいろんな彫刻を残したのですが、彼が言うには、自分で彫ったんじゃなくて、石の中にある形を取り出してあげたらしいんです」
「ああ、いい話ですね」
僕は、こういう話が“いい”ということがわかる。なにか“いい”ものが心の中に結晶していて、それがいい話・いい行いと共鳴する。