おばさん理論

「ねえその紙袋貸して」
「あなた誰ですか」
「誰だっていいのよ。その紙袋使わないんでしょ? 貸してちょうだい」
「これはわたしが使っている紙袋ですので、あなたに差し上げることはできません」
「はいはい、あんたが使っているその紙袋ちょうだいって言ってるの。ああらどうしましょう、あなた日本語わかる? 貸してちょうだい」
「あなたのおっしゃっていることは分かります。この紙袋はあげません」
「いやー、だから貸してちょうだいって言ってるのに、あのね、ちょうだいって言ってんのにわっからない人だね。あんたのつごうなんて誰も聞いてないじゃないの。はい紙袋渡しなさい」
「この紙袋使ってるんです。お願いですから勘弁してください」
「勘弁してってまるであたし脅してるみたいじゃない。ねえまるで脅してるみたいじゃないのマーしっつれいね。あのね、言っとくけどお願いしているのはこっちなの。こっちがお願いしているのに、どうしてあんたが頭さげなきゃいけないの」
「はあすみません」
「でもサ、どう見ても中に何も入っていないじゃない。家へ持って帰っても捨てるだけなんでしょ。だったら、ホラ資源を大切にっていうでしョ、ね。さ」
「ですからさっきから言ってますが、この紙袋は渡せないんですが、いったいなにに使うんですか」
「んま、人が紙袋をなにに使おうとあんたに関係ないじゃない。ああらまあなぁにそれ、なに聞いてんの。なぁに、なんてプライバシーの侵害、侵害じゃない」
「いえそんなつもりはないんですが……」
「アノサ、こんなに頭下げてもだめ? こんなにお願いしてるのに、これ以上あたし何すればいいっての? あんたひどい人だねぇ。ああああいらんわ、そんな紙袋もーいらない。はん、そんっなボロ紙袋くらいくれてやるわ、ケーチケチケチケチケチ」
「この紙袋が、あなたが言うそんな程度のものだったら差し上げますが、わたしには必要なものなので渡せないと、さっきからなんども言ってるんですけどね」
「なぁに子供みたいなこと言ってんの。その紙袋が必要なのはあたしの方なの。わかる? あんたよりあたしの方がその紙袋を必要と、し、て、い、る、の。わかる? んんんもぅどう言ったらいいのかなぁン。わかるあたしの言うこと、もっとゆっ……くり言ってあげましょうか日本語わからないようだからでもあんたみたいにどうせ高校もろくにでていないようじゃなぁに言っても無駄だわネあんたいったいなに様のつもりなのいい気なもんねいい気になっていい気になんじゃないよなんでこんなこんな同じことなんども何度もなんども何度もあたしに言わせるのなんなのまァちょっおおと教えてあげるけどそんな口のききかたしていたら社会じゃいっ……さい通用しないよいっ……さい通用しないあんたわたまわかる何いってるかあたしだからあんた口が口の口をきいているききかたを許してるっているけどねぇんが世の中じゃ世間んじゃ通用しないよばあ?なに言ってんのなに何はっきり言いなさいはっきりとそんなこ汚い紙袋あげないんだったらあげないってはっきり言いなさいはっきりともーほんとあんたわけがわかんてこまいわあただしこけこめで何時間ムダにしたと思ってんのそのボロ袋はいって渡すだけのことどーしてできないかなーあなへげてめそいてさちょっとあんたちょっとどこ行くつもりまだこっち終わってないでしょまずそうやって人の話をろくに聞かなくてみららばてつばっばらみんわかるように喋ることができないんだよオイ!あんたいいかげんなし冗談じゃってこっちだって何本電車逃しているてか同じしょめめ同じじゃない何が違うのだからあんたがどこへ行こうがあたしに関係ないじゃないすすきなとこ行きなオラどこへ行くのまだあたしの話終わってないだれをさっきからどうして同じこと言わせるのかしらまあ、ほんとにあなた留学生なの?」