九十九怪談 第一夜|木原浩勝|角川書店|2009/07/07-07/12

九十九怪談 第一夜|P277|自|4
度も出てくるMさんが同一人物だとすると、この本はそのMさん故に出来上がったのである

第十二話 山のスタジオ その二
(P36)返事をするとトンデモないことが起こりそうな気がしたので、黙っていると、寝ている左腕に何かが二つ、トン、と当たった。横目で見ると、正座でもしているのか、女の膝頭が二つ、腕にピタリとくっついている。膝が当たっているとはいえ、腕と壁との距離は十五センチほどしか離れていない。もしそこに本当に人がいれば、太ももより向こうは間違いなく壁の中にある
第十七話 いがいとかしこい
(P49)まさか笑い声があるから木霊ではないだろうと、お前は誰だぁー、と叫んでみた。すると「お前は誰だぁー」と少しオカシイ日本語が返ってきた。これはきっと、昔親父から聞いたことのある狸か何かの仕業に違いない……。と思った時だった。「いがいとかしこい」という声が聞こえた
第十八話 携帯写真
(P51)今の何? それより撮れてる? 今の玉……。そう友達に促されて携帯の写真を見てみると、オレンジ色の光の玉の中に、しゃがみこんだ一匹の猫が写っていた。……というよりも、しゃがみこんだ猫がオレンジ色の光に包まれているようにも見えた
鶴川街道
(P52)町田から調布へ抜ける道。町田市原町田〜調布市下石原
第二十一話 公衆トイレ
(P57)用を終えて手を洗おうとした時だった。突然、また個室から水の流れる音が聞こえた。あれ? まだ他にもいたんだ。そう思って奥を見ると、さっきと同じ個室から、白いヘルメットを被った男が出てきた。背格好といい、作業着の汚れ具合といい、今しがたトイレから出ていった男にしか見えなかった
第二十二話 ギシギシ
(P60)よく見ると、車の中は、もうこれ以上入らないくらいの量の、真っ黒なビニール袋でいっぱいだった。なのに、車は相変わらずギシギシと音立てて揺れている
第四十二話 おいおい
(P114)スコップを持ち出したEさんは、調査員が驚いた顔をして見つめている中、縁の下を掘り返してその中に酒徳利をそっと置いて土をかぶせた。その時また酒徳利から、おい、おい、という小さな声を聞いたような気がしたが、夜の時と違ってとても慌てているように感じたという
第五十二話 置物
(P138)阪神・淡路大震災の時、Gさんの部屋の棚に飾ってあった、瀬戸物でできた大きな猫の置物が床に落ちて割れた。その割れた中から、干からびたたくさんの金魚と二匹のインコが見つかった
第五十六話 リフォーム
(P151)それにしても何でこんな風にしたんだろう? そう思って中を覗くと、小さな採光窓の上に大きなお札が貼ってあった。さらによく見ると、天井付近の角の左右に二枚、その下の床近くの左右に二枚。合計五枚のお札がぴったりと壁に貼ってあった
第六十二話 ヒヨドリ
(P167)九州のとある病院で看護師をしているNさんの話。(中略)今もこの部屋に入院する患者の全てがヒヨドリの話をするので、誰言うことなくこの部屋を“ヒヨドリの部屋”と呼ぶようになったという
第七十二話 鎧
(P192)廊下を歩いていると、いつきたのか、すぐ手前から鎧姿の人がこちらへ近づいてくる。なるほど、この旅館ではサービスに、鎧を着て見回りをするのだと思った。Sさんは旅館の旅館の従業員の見回りだと思って頭を下げると、鎧姿の人も深々と一礼した

(P229)フリーライターのIさんが取材を終えて、カメラマンの運転する車で千葉県流山街道沿いの脇道を走っていた。(中略)休憩しようと、三輪野山四号公園予定地付近に車を止めた。(中略)携帯で撮った写真を確認してみると、確かに両手で太陽を掴もうとしている大きな雲が写し出されていた