「超」怖い話 怪逅(かいこう)|久田樹生|竹書房文庫|2009/06/20-06/22

恐怖文庫 超怖い話 怪逅 (竹書房文庫)|P233|自|5
味不明の言葉の羅列を明晰に記憶し続ける人がいる

加塩家
(P12)その日から、叔父さん、右手がおかしくなったんだ。ものを握ることができない。それどころか腕そのものが自由に動かせないみたいなんだ。そして、たまに「アラミジャ」って口走りながら、楡の周りをぐるぐる回るんだ
呼ぶもの、呼ばれるもの
(P17)白い塊がある。塊には顔が付いていた。細い目。上を向いた鼻。横から押されたように盛り上がる頬。尖った口。くちゃっと圧縮されたような、子供の顔がひとつ、詰められていた。〈ミギュウ〉顔が一声鳴いた
千鶴子
(P30)夜中、ベッドに入ろうとしたとき、千鶴子からメールが届いた。『アクラカクラアブドドアラムアラアタメギ』意味不明のカタカナの羅列。スクロールしていくが、いつまでも終わらない
旅先でのこと
(P180)「おーい! 大丈夫かあ? 上がれるかあ?」爺さんの呼びかけに女が返した。「おごべろっちゃんだなもし。はぴだっげろっすもへあ!」何語だ。爺さんはもう一度叫んだ。「何言っているか、わからんぞー!」女は残念そうに頭を振ると、川に飛び込んだ