「超」怖い話Μ(ミュー)|編著:平山夢明|竹書房文庫|2008/09/09-09/10
|P222|自|5
我々はついに目の前の自分を凝視することしかできず、他人をよく見ることはできませんでした
- おりん
- (P9)すると。〈げぇ〉突然、人の悲鳴のような音がし、おりんが割れ、焼香台から落ちてしまった
- ありがとう
- (P18)もしかすると自分は、見沢さんを助けるためにあの部屋へ行ったのではなかったか。その為に、あの部屋へ行かされたのではなかったのか
(P47)一次白紙→一時白紙
- 手洗い
- (P63)駒野さんは洗面器にお湯を汲むと、その中に〈お清めの塩〉を混ぜ、おかあさんの手を洗ってみた。「そしたら妙なことに」お母さんの手から、何やらべとべとぬるぬるした臭い元が出るのだという
- 管理不能
- (P83)勢い良く回そうとして、それがノブではないことに気付く。手首だった。視線を上げると、ドアの内側に、厚みのない女が張り付いていた。灰色の服。黒髪は長い。顔は見えない。自分の右手が、薄っぺらいポスターのような女の顔面に、御札を押し付けているからだ
- ぷりきゅら
- (P95)コマの一枚一枚が進むにつれ、彼女たちの背後……肩越しに五人目の頭が映っていた。前髪の間から、恨めしそうな目をして、それは少しずつ、画面に乗り出していたのである
- あおる
- (P103)蟹の甲羅を裂いたように顔の部品が周囲に散らばっていた。両脇に逃げた眼球だけが、喰いちぎらんばかりに彼女を睨みつけていた
- 迷宮と判断力
- (P111)「あの時は何も考えられなくて、本当に、本能的に厭な感じがしただけなんですが──今思い返してみると、あっちの方角、海なんです」
- いたくない?
- (P115)ガラス戸から差し込む脱衣所の灯り。慌ただしく湯船から立ち上がり、その戸に腕を伸ばして、凍りついた。誰かが座っている。曇りガラスの向こう、脱衣場(ママ)の足拭きマットの上に人影がある。体育座り。ぼんやりと見える全身はまだらの赤
- 単独事故
- (P127)二度、パッ、パッとまばたきをする間に、男の左耳が消えた。一瞬前までパンチ頭だった則頭部が、ゴッソリ抉れていた。カンナで削り落としたように頭の左側が失われている。小さな、卵のカラのような破片が血だらけの頬に張り付いている。男が顔を上げた
- 雑草鬼
- (P131)カーテンの隙間からそっと覗くと。「庭に裸の男がいたんだ」全身緑色の大男で、雑草の生い茂る庭のあちこちでドーンドーンと倒れ込んでいた。彼が思わず息を呑むと、倒れた男がゆっくりと首を巡らした
- 吐瀉物
- (P142)その日に撮影した写真の中に、薄暗い茂みに立つ、鐘尾自身の一枚があった。腰から上のミドルショットである。どこか放心したような顔つきで、真っ直ぐレンズを見つめている
- 莫迦だねぇ
- (P167)〈ふつっ〉男が口をとがらせ、何かを吹き出した。額に当たったものが畳の上に転がる。見ると黄ばんだ粒が幾つか散らばっていた。小さな歯、に見えた。驚いて天井に顔を戻す。男は依然としてそこにいる