サウンドトラック 上下|古川日出男|集英社文庫|2006/11/18-2007/01/14

サウンドトラック 上 (集英社文庫)、下サウンドトラック 下 (集英社文庫)|上P302、下P358|自|5
友克洋を文章化したような雰囲気が一部にある。西村寿行の正しい後継としての動物小説。黒犬以外の著作で確認すべし

トウタ(十歌)
(上P9)6歳。父が波にさらわれ、自力でクルーザーを島影に向ける(上P20)名前と能力(上P94)海の老人との会話で6歳の記憶を呼び覚ます(上P129)佐戸川の養子となったヒツジコとの別れ(上P199)2008/06、東京上陸(上P211)エレベーターバスに乗り仕事を得る(上P230)一週間も結婚式場で暮らすうちに、ずいぶんと居住者の顔ぶれを覚えた(下P21)ナショナリストの車で逃げる(下P32)外濠公園の対岸に“銃”を持ったレニを目撃する(下P135)2009/03/01レニと会う(下P176)2009/03/15神楽坂の北端に立つ(下P203)キャビン様の操舵室を具えたクルーザーを入手した
ヒツジコ(羊子)
(上P12)4歳半。東京−小笠原行き客船。太った母が無理心中しようと海へ飛び込んだが、救命ボートに投げ出される(上P23)名前の由来(上P34)焚き火の影と踊る(上P69)10歳の遠泳大会で4歳半のときの記憶を蘇らせる(上P123)佐戸川ヒツジコとなる(上P160)16歳(上P189)ヒツジコは子守りを熱心にこなす(上P193)ママは、あるいは生みの親に次いでの二人目の戸籍上の母は、失われた(下P47)ヒツジコと佐戸川聖は誰にも聞こえない言葉を交わしている

(上P20)陸に上がる頃には、少年によって浮揚させられていた少女も自ら、手足を動かすだけの反応を示して、それは一種のデュエットと化した。
(上P23)火(上P26)羊(上P29)地震(上P35)ヤギ駆除の都職員
(上P29)舞ったときに両腕が回転してひつじこ自らの輪郭があたかも球体に変じていた。
(上P42)感情がザワザワした。論理的ではないが責められている気がした。
(上P42)責められている感じはつづいていた。罪滅ぼしだ、と都庁職員はわけもわからず自戒の言葉のように囁いている、罪滅ぼししなけりゃならねえぞ。
(上P45)本籍は東京都小笠原村父島字西町(上P45)1997/08/11に西舘トウタと西舘ヒツジコの兄妹が法的に生まれた

吉崎(やまかんむり)夫妻
(上P46)トウタとヒツジコの養父母
佐戸川俊一
(上P56)トウタが小学校四年生の新任担当教員(上P62)三回続いた友人の死が火曜日の真夜中に起きたことに気づいた(上P172)1994/04/02の挙式以来

(上P57)そもそも本人はあらゆる場面で、皆と同じように歌っているつもりで、まるで成功していなかった。寓意のように変形した、旋律もリズムも。

佐戸川うずめ
(上P59)俊一の妻。一つ年下。不妊(上P170)うずめは、ヒツジコという愛娘を得てからは毎晩床に就いた二秒後には眠っている。(上P183)そう、胎内に子供がいる。

(上P65)トウタという少年の精神において、感受性の内側で、音楽は沈黙して絶対的に封印されていた。音楽は死んでいた。

老人
(上P74)屏風谷のトラックに住む。70歳以上

(上P90)膝から下の爪先までの部分。動いていた。テレビを真似るように、交叉して、踵が跳ねて足指がたち宙のどこかに沈んだ。

松夫
(上P95)犯罪者。兄島にピッグダムを作る
虫のすだき
(上P96)虫が多く集まり群がって騒ぐさま

(上P101)それは海を渡って来た。凶兆、純粋凶兆。

舞踏譜
(上P125)ダンスノーテーション。踊りの楽譜(上P166)舞踏譜はキノテーションと呼ばれる記譜法に基づいた、楽譜と建築図面と数式をミックスしたような不思議な美しさと緊密さを横溢させた「地図」

(上P129)トウタは音楽を知らない、しかし教科書は見ている、授業では学んでいる、甲板にいて舞っていたヒツジコがその一瞬誕生させた影の形、あれは、音符だ、とトウタは理解する。

レニ
(上P130)意志によって一瞬で性別を変えることができる。13歳。ハシボソガラスのクロイの巣を探す(下P58)レニは痩せさらばえた一羽の亡骸を白銀(しろがね)公園に埋めた(下P98)レニは傾斜人のテリトリーそのものの撮影をはじめている
傾斜人
(上P139)バラックに不法居住する
ブルガ
(上P140)鷹のための目隠し
サッカール
(上P140)鷹匠

(上P164)その写真のどれにおいてもヒツジコの身体のどこかの部分がぼやけていた
(上P175)この地名が明示しているように、旧来、西荻窪を土地の人間はニシオギと呼びならわしている。窪は失われている。
(上P178)決して目を覚まさないうずめを相手に、その肉体を、横から衝(つ)いたり、後ろから撞(つ)いたり、あらゆる体勢で挿れた。

佐戸川(せい)
(上P186)俊一とうずめの実子。2007/12/21生まれ(下P338)その夏、まだ一歳七ヶ月の、コロコロとした肉体の幼児が、できるはずのない対応をしていた

(上P191)他者とダンスをシェアする、一度もそんなことはしたことがなかった。

西荻窪クリスタルナハト
(上P194)2008/05午後6時半の日没、西荻窪駅の周辺は騒乱に見舞われる(下P33)2009年というその年が明けて以降、西荻窪は自警団を組織する。「安全な西荻地域社会をめざして」基金
リリリカルド
(上P218)コロンビア人、医者(上P225)東京が不法移民たちにとっての無医村だと知った

(上P229)結婚式場のある市域は旧オークボと呼ばれていた

ピアス
(上P234)結婚式場のパイオニア。屋上(六階、ガーデン)に住む。全住人とセックスしても妊娠しない

(上P248)トウタは音楽を聞いているのではない、むしろ音楽そのものと同衾しているのだという現実がわからなかった

中山優高(ユーコ)
(上P261)遅刻ガール。ヒツジコの踊りを目撃しても揺さぶられない(下P148)校内をチェックして死角をなくす(下P149)03/14卒業式の当日に、西荻窪駅へ向かう各駅停車の中で仕掛ける
湊冬子
(上P275)寮生かつらガール。フユリン(下P145)テレジア敷地内にガチャポンを埋める作業
バビロニア(カナ)
(上P283)全身全霊ガール。ボクサー(下P137)2009/03/11タカちゃんを奪還するために「安全な西荻地域社会をめざして」基金事務所を襲撃する

(下P9)2009/02/17(火)大安に、両腕のやけに長い中年男の殺し屋が、インド人を殺し、トウタに殺される

ナショナリスト
(下P21)(ナショナリストの車の)ボディには「政治結社・太陽青年會」と躍る文字で記されている

(下P31)対岸の人間たちは実際に始発電車を漁法の一種に利用していた
(下P47)ヒツジコはほとんどフェアに、傾向を持たずに、ダンスを目撃した個々人のオブセッションそれ自体に語らせた

ケイオティック
(下P50)混沌。RPGのアライメント

(下P66)レニはここで初めて自分がずっと映画を発明しようとしていたという事実に思い至る

居貫正道(マサミチイヌキ)
(下P69)身の丈六尺二寸のポルノグラファー(下P104)瓢箪坂を昇りきる前に、居貫は襲われた

(下P99)右手に写真銃を握り、左肩には一羽の映画を知る鴉を留まらせた性のない少年/少女が、モトマチの傾斜地帯を shoot する
(下P105)都内西部のクールな流行に敏感に反応して、全員がスキンヘッドにして、必ず戸籍謄本かそのコピーを携帯していた。自分たちは純血である、例えば家系図だって示すことが可能なぐらい純血の日本(ニッポン)人であると、誇った

コロポックル
(下P124)三人いた。おかしな格好をしている。半ズボン、吊りバンド、しかし目立つのは顔だ。ゴーグル? それとも、変形したヘッドライト? 鼻から上が奇妙なもので覆われている
八咫烏(やたがらす)
(下P129)三本足のからす。http://katori.adam.ne.jp/karasu/karasu-1.htm
タカちゃん
(下P137)超能力で宝籤の当たり番号を念写する。「安全な西荻地域社会をめざして」基金に拉致
多羅仏母
(下P151)衆生を彼岸へ引導する菩薩
ビコミ
(下P158)ビットのコミュニケーション。インターネット上のライブ中継

(下P191)用意されたピースのごとく、クロイがそれ自体を生きている映画に、一切の音楽を死なせているトウタはぴたりと嵌まる
(下P195)2009/03/21東京の夏がはじまる(下P196)渋谷区内で謎の自動車爆発事故(下P198)蚊が媒介するウイルスによる感染症

スコヒ
(下P195)スコールヒート
コンジー
(下P196)エアコンディショナー地獄
初台行進
(下P260)2009/07中旬、法定伝染病患者、国際伝染病患者、指定伝染病患者123名が首都高を練り歩く