映画『タイムライン』あらすじ

14世紀の服装の男が21世紀の自動車の前に飛び出したと聞き、とある企業ITCはさっそくその男の回収に向かった。同時に回収した男のレントゲン写真は、もう生きているのが不思議なほどの肉体の異常を示していた。
 それを知ったITC社長はラフな服装でテキパキと指示を出した。「じゃ向こうの様子を探るために、現場に詳しい例の考古学博士を送り込もう。博士にはこの“Help me”の羊皮紙にサインさせて持たせること。あそうだ、明日あさってには博士の息子と、その婚約者になる予定のやはり14世紀の現場に詳しい女性研究者と、発掘がひまな時にはなぜか弓矢の練習をしているイケメンロンゲと、ちょっと気弱で無口な中世フランス語研究者に、地質学も修めた物理学者も来るはずだから、当時の服装をえーと4名分用意しておいてくれ。ああ、もちろん私も彼らのうち3名が無事に帰還してから当地へ行くことになるが服はこのままだよ。何か質問は?」
 眼鏡の技術担当部長は社長に尋ねた。「あの、お言葉ですが社長、我が社は14世紀にもあさってにもたいして詳しくない一企業なはずですが、その指示内容の根拠をお教えください」
 社長はふむとうなずき右眉を上げ、デスクの引き出しからガラスケースを取り出し机の上に置いた。そしておごそかな表情で技術部長に「我が社の命運はすべて、この予言書に書かれてあった」と言った。
 ガラスケースの中の古びた本をしげしげと眺めた技術部長は社長を見上げた。「ふむ……“タイムライン”と読めますかな」
「その下を見たまえ、どうだ読めるかね技術部長」
「これは! 社長のサインではあーりませんか」技術部長の眼鏡がずり落ちた。
「次はこれだ」社長はデスクの引き出しから、さらにやや大ぶりのガラスケースを取り出し、机の上に並べた。ガラスケースの中には古びたジーパンが入っていた。「予言書は、この服のポケット部分に入っていたのだか、これは今わたしが履いているこのリーバイスなのだ。炭素年代測定でもまったく同じ物であることが確認されている」
「リーバイスの赤タグですな」
「そうだ。つまり、この14世紀の遺跡から発掘された予言書を書いたのは、実はわたしだ」
「なんと」
「じゃこれを見てくれ。予言書の228ページのコピーだ」
「……んんむ、ではここと14世紀との間をワームホールで繋げたのは技術部長であるわたしだったのか」


こへとつぜん14世紀に詳しい例の考古学博士が現れた。「14世紀に火薬を発明したのは、実はわたしでした」


らに、博士の息子と懇意になる予定のやはり14世紀の現場に詳しい女性研究者が現れた。「お城へ続く地下通路を見つけるために、あの祭壇のすばらしく美しいレリーフを破壊したのは、実はあたしなの」


突に、発掘がひまな時にはなぜか弓矢の練習をしているイケメンロンゲも現れた。「耳が切れた石像は、実はおれがモデルだったんだ」


まけに、ちょっと気弱で無口な中世フランス語研究者も現れた。「古文書に一行だけ触れられている、王に処刑されたフランス人スパイって、ぼくのことなんだ」


後に博士の息子と地質学も修めた物理学者がそろって現れた。「おれたちゃ“歴史的”にも主人公的にもなんーにもしていないが、お前らみんなが“オレオレ詐欺”みたいにオレオレ言うのは許せない!」


ると全員その場でパッと消え、5時間後にパッとまたその場に現れた。「おい社長! 科学的説明の割にはその説明を補うヴィジュアルがぜんぜん足りないぞ」と言ったのは果たして誰だったのか?
 あ、そうそう、これネタばれの嵐なんで、なんとなく読んじゃった方はあきらめてください。