見晴し

類初の有人宇宙飛行を経験したガガーリン (Yurii Alekseevich Gagarin, 1934-1968) は、地球に帰還した際「地球は青かった」と述べたと伝えられている。
 観測的知識をまとめることにより「地球は丸い」ということが人口に膾炙していたが、初めて宇宙より丸い地球を俯瞰した個人が発した言葉は、「丸い」ではなく「青い」であった。これは自然史上もっともエコロジカルな発言である。


々の部分があるひとかたまりとしてたち現れると、あたかも全体が俯瞰されているかのような印象が与えられる。それは、その印象で自分が寸前よりも見晴しのよい地平に立つことができたということである。そこはガガーリンが「地球は青かった」と気がついた場所に限りなく近いであろう。全体が錯覚であることを知り得ない私は、その“地平”が私の宇宙であるということを確信してやまない。


体が「一目で見渡せ」なければならない、その立ち位置。それは私が上や後ろへ移動することであり、いったん後ろに立つとふたたび前へと戻ることができない位置。