病院坂カットアップ

「やあやあ!」


「本当によくあることなのだよ。少なくとも犯罪追求のステージにおいては、だからさしあたってのきみの課題は妹さんとの近親相姦だって何も間違っちゃいなかったよ。とは言え、さりげなく彼女に近付いて表情を感じてくれないんだろうな、それが残っているではないか!」


「迎槻くんは呼び出しておいてあげるよ。……そんな顔をしないのと同じだ。そういう意味だよ。妹を守るために下校している。学園を出てしまっている以上に自分を誇ってもいいわけだ。立証のしようがないんだからね。可能性としてはなかなか気恥ずかしいものがあるのだが。ま、どちら? 空気抵抗は考えないほどに正解に近い。さすがは様刻くん、Dくん、Eくんの五人がいたかどうかはともかく──迎槻くんは、『指導』の最中に数沢くんを殺すことが可能になってくれるだろう」


「だってさ。その国府田先生が嘘をついていると……彼女がきみの妹さんだ」


「ちなみにさっきまで、僕の魂は、より深く死ぬこともあるまいしジャージ姿をきみに見せた、と考えられなくはないし、むしろ主流とも思えないほどにね、本当、どうしようもないのにけなげだね、きみが迎槻くんと交わした約束の時間しか、今日の五時間目しかないのはいうまでもないことを思えば、琴原さんの剣道場に入ってきていないかどうかなんてのは、僕には分からないんだ」


「だろうね。だがきみの妹さんも琴原さんも、おっぱいは慎ましやかなような変態にまで殴り込みをかけた状態……『終わってしまって悪かったね。そりゃ確かに名作もあるんじゃない、世界との対立事故』。もっと公序良識ある持論の一つでもあるのだが、『パズラー』の看板というなら、僕はフーダニットをくぐるところを、この自慢の猫目でしっかりといえばありか? ありかなしかでいえば、様刻くんは、ちょっと手前の席の人間が読んでいる漫画が何なのか分からない阿吽(あうん)の呼吸か。僕はこのところ笑いになったんじゃないだろう。ああ、ちゃんと応えておくと、僕もきみのことが大好きになるのに理由は? 狙いは? 目的は? この物言いながらもね、様刻くん。……ごめんね?」


「そういってくれないんだろうな、それが残念でならない。世界は、破綻しては、ならないとここらの田舎バスでも捨ててしまえば、こういう状況になってしまえば、あれにはもう大して、迅速なる会話の終了へ向けての努力とやらの出番はなかったようだった。だが僕は、きみが自慢げに見せてくれた妹さんの写真と交換した、そういう目立つ部分が抜けて、綺麗なお約束の時刻午後七時まであと何人残っているではないか! な、なんておかしいんだ、実に愉快極まるな。腹がよじれてなかったかい? 垂れていなかった? それは、最悪だ、最悪だ最悪だ最悪だ、僕にとってはとんでも声帯模写なんていうことはただの欺瞞に過ぎないのだろうか──などと、諦めるのもまだ問題がありましたって感謝するよ。きみは、妹さんのために数沢くんを痛めつけようという心意気は持っている病院坂黒猫と会いたいがためのポットという道具があるが、最もフェイタルなところのある、『本格』推理は何もない、ただ端的に答えよう。きみとそんな関係になって妹さんの恨みを傷つけはしなかったから僕を水臭(みずくさ)い奴だとは気付かないものかと、解答のわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない………………………………………………………………………………………………」


「僕には分からないんだ」


「僕には分からない」


「僕にはできたな……正直エゴイズムが過ぎてよくないと、後ろをつけていた仮説とは、『あの日あのとき様刻くんが見ているその際には、もうとっくに学園を出てしまった、その上でやると信じてたり、崩れたりすることが耐えられるものがこの程度だとは思わないからこんな釈明めいたことを言わなくてはならない不確かな思いやりの心からようやくのことで生じた奇跡のような老婆心を全く逆の意味に受け取ってくれるのは悪い気はしないが、できれば別のシチュエーションを望みたいものだよ──もっともこの僕にしたって、殺人にそういう形で関与してしまった以上、そんな不自然なことをやってのけた以上、彼らには何らかの条件の下において動きが制限されているとも思えないから、多分犯人は数沢くんで間違いないだろうというのが僕の結論だ」


「不安は解消されなければならないのだけれど、昔の先輩やらが放置しているところがあるというのが僕のささやかな、僕らの学園生産する暇すらも、成り立つわけにはいかないが、だから『それでいい』というより『それでいいにする』という、一種の迂回、一種の妥協だな。だがしかし『そのためだけ』というか、そうじゃないとでも思っていたのか。琴原さんと仲直りしただけではあるのだが、数分間打ち合っていて、それも一方的でもなく、『崇高さ』を準備しておくべきだったよね、様刻くん」




「櫃内様刻、そこは情報なき僕らには絞り込みようがない。客観的に言って一番疑わしいのが誰かという話をすれば、そんな『後出し』の情報は、剣道場の入り口から遠い方、僕か証人になれる。防具もつけていないところに突きなんか入ったら普通は即死する。ならば死んだのはその間と見るべきだろう、『分かりやすい』形での動機を持つ人も、そう結論されると思う。無論、教室についた時間を示し合わせれば、その晩なのだろうか、保健室できみから琴原さんとの仲直りの手法、誰にもできない。世界において、剣道場の入り口から遠い方、僕は解答に肉薄していたような気分だったし、ちょっと離れたベッドにいた僕が放り投げた本が教科書なのかどうかも分からない、琴原りりす、ところがこれが、当事者である僕ら──今回の件の一番中心にいた様刻くんの視点から物語を眺めたところで、誰かに殺されたのかもしれない。都合よく、櫃内夜月、本当、容疑者のリストに入れようとする行為は根本的に間違っていて、言うまでもなく、高校剣道部なのだ、あのとき、高校剣道部なのだ、誰でもが犯人でありうるような、そのとき、迎槻くんと数沢くんが打ち合っていた、意外と、そのときのことだ。正直この条件で犯人当てをすることは結構な難易度だとは思うが──それでも、理解が易いようにこれまた結論から言うと、そうでなければ、ポイントはそこだ」


(参考:Cut it up.